研究分野
令和6年度 国家課題対応型研究開発推進事業 原子力システム研究開発事業 選定課題
基盤チーム型:計2課題
No. | 提案課題名 | 研究代表者 [所属機関] |
参画機関 | 概要 |
---|---|---|---|---|
1 | 革新炉の設計最適化に資する詳細二相流解析コード妥当性確認のための技術開発 | 吉田 啓之 [日本原子力研究開発機構] |
MHI原子力研究開発株式会社、西華デジタルイメージ株式会社、ヒューマンサポートテクノロジー株式会社、茨城県産業技術イノベーションセンター、九州大学、関西大学、筑波大学 | 革新炉等の安全性向上・開発研究の加速に、機構論に基づいた詳細二相流シミュレーションの活用が求められている。原子力機構では、界面捕獲法による機構論的詳細二相流シミュレーションコードの開発を行っている。これらのコードは、実験相関式等を含まず、二相流の瞬時・局所の界面情報を与えることができるが、実機評価への参照解を提供するためには、実験データによる不確かさの明確化、妥当性確認をする必要がある。しかしながら、詳細二相流シミュレーションの解析結果と比較するための瞬時・局所的な二相流データは少なく、体系的な実験方法や比較方法、妥当と判断する基準など明確な基準はない。本課題では、先進的計測技術を開発して二相流の瞬時・局所的なデータを取得し、判断基準を検討した上で妥当性確認を行う。本課題で開発される計測手法は、今後の二相流研究における重要な技術となるとともに、本課題における妥当性確認プロセスは今後の実験計画立案や不確かさ評価方法に対して貢献する。 |
2 | 多様な革新炉用燃料製造を可能とする実用技術の開発 | 植田 祥平 [日本原子力研究開発機構] |
株式会社エスケーファイン、株式会社シンターランド、株式会社ポセイドンCAE、広島大学 | 原子燃料材料は酸化物や炭化物、金属など様々な化学形態が考えられてきたが、その製造技術は開発当初からほとんど変化がない。原子力機構は、三次元プリンティング(3D造形)技術を適用した革新的な燃料製造手法の基盤技術を実証し、さらにマルチフィジクスシミュレーションによる製造プロセス設計支援ツールも構築してきた。本提案は、我々が開発した3D造形技術を活用し、高温ガス炉や高速炉等の多様な革新炉用燃料製造を可能とする実用技術の開発である。まず、既開発の設計支援ツールを炉型別に拡張し、スラリー調製、積層造形、スパークプラズマ焼結の各プロセス試験を効率的に加速し、模擬燃料ペレットを試作する。加えて、共通製造プロセスの小型化装置概念を検討し、自動化による作業員被ばく量の大幅な低減、デジタル駆動による高い燃料品質と一括造形性能、燃料要件に対応する柔軟性を評価確認する。以上により、製造工程の効率化と品質保証の改善による極めてコストパフォーマンスに優れる原子燃料製造技術の実現性を示す。 |
ボトルネック課題解決型:計3課題
No. | 提案課題名 | 研究代表者 [所属機関] |
参画機関 | 概要 |
---|---|---|---|---|
1 | MA核種の核分裂反応データの精度向上に関する研究 | 木村 敦 [日本原子力研究開発機構] |
東京科学大学、京都大学 | 高燃焼度(100GWd/t)のPWRやマイナーアクチノイド(MA)核種を燃料に含む新型炉の設計に際し、MA核種の核分裂断面積、中性子捕獲断面積の微分データの精度が充分でない事が問題となっている。提案者らのグループを含め国内外の研究により、中性子捕獲断面積については精度が向上されたと評価されているものの、核分裂断面積については現状でもまだ精度が足りていない。これは測定に通常用いられる核分裂電離箱(FissionChamber,FC)が崩壊α線の妨害を受ける、核分裂片が試料を透過する必要があるため試料重量が制限されS/N比が悪化する事が原因である。そこで、本研究ではFCではなく核分裂時に発生する高速な中性子を反跳陽子型の中性子検出器を用いて測定することでMA核種の核分裂断面積を高精度に導出する。さらに、測定により得られた断面積データを核データ評価することで、新型炉開発の基盤となるMAの核分裂断面積を整備する。 |
2 | 新型炉開発のための核設計データ同化フレームワークの構築 | 長家 康展 [日本原子力研究開発機構] |
株式会社原子力エンジニアリング、名古屋大学、北海道大学 | カーボンニュートラルとエネルギー安全保障を実現するために、小型モジュール炉(SMR)をはじめとする様々な新型炉が提案されている。新しい材料や従来とは異なる中性子スペクトルを持つ新型炉に対する核設計は、評価済み核データの不足や不確かさにより、予測精度に課題がある。従来、核設計の予測精度はモックアップ臨界実験により評価してきたが、昨今の状況からモックアップ臨界実験を実施することは非常に困難な状況である。これは、新型炉を開発するうえでのボトルネックとなっている。このボトルネックを解消するため、核設計データ同化フレームワークを開発する。データ同化手法の一種である炉定数調整法は、主に高速炉の核設計で利用されてきた手法であるが、高速炉以外の炉型にも適用できるようなデータ同化手法を開発する。データ同化手法を適用するには多種多様な臨界実験データが必要となるが、臨界実験を用いない代理積分実験手法も開発し、新型炉に対する炉物理実験データベースを構築する。 |
3 | 再エネ調和型次世代原子力プラント実現のためのDX | 髙屋 茂 [日本原子力研究開発機構] |
長野大学、日揮グローバル株式会社 | グリーントランスフォーメーション実現に向け、再生可能エネルギー(再エネ)の主力電源化と原子力の活用が重要である。次世代原子力は、蓄熱技術等と組み合わせることで高い設備利用率で再エネに対する調整力を果たすことが期待される。再エネ調和型次世代原子力プラント実現のためには、需要電力量及び再エネの発電量の変化に応じ、次世代原子力プラントの安全性を確保した上で発電量及び蓄熱量等を最適化し、対応するプラント操作を提示する必要がある。しかしながら、そのためには多大な時間を要する解析を行わなければならず、適時の対応が困難で、ボトルネックとなっている。本提案では、DX技術を活用し、プラントの安全性に影響を及ぼす禁止プラント操作を自動で探索する技術、及び必要な発電量等に応じたプラント操作を瞬時に提示する技術を開発する。さらに、事前検討で開発した電力需給調整最適化システムにそれらを組込み、有効性を示す。 |
特定課題推進型:計2課題
No. | 提案課題名 | 研究代表者 [所属機関] |
参画機関 | 概要 |
---|---|---|---|---|
1 | 熱中性子炉を用いた医療用RI(Ac-225,Lu-177)の製造と精製、及び前臨床研究 | 白﨑 謙次 [大阪大学] |
京都大学、金沢大学、長岡技術科学大学、日本原子力研究開発機構 | 225Ac及び177Luを対象とした熱中性子炉によるRI製造であり、228Ra(n,γ)229Raを利用した229Thの製造、228Th/229Thをジェネレータとして用いる225Ac製造、176Yb(n,γ)177Ybを利用した177Lu製造及びこれらのRIを用いた前臨床研究の推進を目標とする。また、本事業で培った高線量、Rn共存下での225Ac分離技術は、226Raを原料とする高速炉を用いた225Ac製造にも適用できることから、技術転用における課題の抽出及び対処方法の提案までを目標とする。この課題の実現のために、①228Raターゲットの作製及び熱中性子炉での照射、②228Th/229Thジェネレータからの225Ac分離技術の開発、③177Lu自動分離技術の開発、そして、④225Ac、177Luを用いた前臨床研究の推進のための基礎検討、の4つの項目を並行して実施する。本事業で提案する手法は、豊富なトリウム資源を背景に、将来の225Ac製造の一翼を担うことになる可能性は十分にある。また、医療用177Luの製造においては、Ybターゲットからの分離精製を自動化装置を用いて行う必要があり、本事業の成果は医療用177Luの国内熱中性子炉での製造において大きな寄与が期待できる。 |
2 | 核燃料物質安定化処理技術の体系化に向けた基礎基盤研究 | 三輪 周平 [日本原子力研究開発機構] |
福井大学、長岡技術科学大学、九州大学、東京科学大学、京都大学、大阪大学、東京大学 | 大学・研究機関・企業で多数保管されている研究活動等で生じた多種多様な化学形態の核燃料物質を安全に長期保管できる形態にすることが必要である。このため、本事業では、長期保管可能な安定化処理技術開発のための基礎基盤研究を実施し、得られた知見・方法を体系化してアーカイブス化につなげるとともに、廃棄体化等の基準及び手法の調査を進めて安定な長期保管までの道筋を立てることを目指す。 具体的には、ウラン含有の水系/有機系/オイル廃液、固体廃棄物、発火性化合物等を対象に、性状・定量分析方法、分離回収方法、安定化処理方法に係る要素技術を開発し、核燃料物質を用いた実証を踏まえて、廃棄物の性状に応じた技術、フロー、条件等を整備して安定化までの基本的なフローを確立する。さらに、廃棄体化等の基準や手法を調査し、安定な長期保管までの課題やその解決策を整理する。 |
新発想型(一般):計2課題
No. | 提案課題名 | 研究代表者 [所属機関] |
参画機関 | 概要 |
---|---|---|---|---|
1 | 革新軽水炉圧力容器鋼の長期健全性確保に向けた照射組織制御の研究 | 福元 謙一 [福井大学] |
九州大学、京都大学 | 革新型軽水炉では低Cu含有圧力容器鋼が主流となるがMnNiSi等の微量添加元素による溶質原子クラスタによる照射硬化からの脆化は60年長運転を行う上において炉寿命を制限する懸念材料となる。本研究では低Cu含有圧力容器鋼のモデル合金を用いてMnNiSi溶質原子クラスタの組織発達過程と照射硬化因子について明らかにし、確率論的な計算機シミュレーションと組み合わせることにより精緻な照射硬化予測を行う。この研究を行う上で高温下動的変形『その場』観察による強度因子測定や低線束密度イオン照射試験による照射組織発達に及ぼす線束密度影響、熱力学的計算による溶質原子クラスタの相安定性評価など新たな知見や計測技術を利用し、従来得られなかった微細組織-強度相関の知見の提供から、既存軽水炉および革新軽水炉安全評価技術の高度化に資する。また革新炉設計段階から60年超長寿命化に最適化された圧力容器鋼組成を提示することが可能となる。 |
2 | 低放射化ハイエントロピー合金の原子炉配管材料への応用と成立性評価 | 橋本 直幸 [北海道大学] |
株式会社原子力安全システム研究所、日本原子力研究開発機構 | 脱炭素社会技術である小型炉及びマイクロリアクターなどの次世代革新炉開発状況と我が国のサプライヤーとしての地位確立を見据え、高温環境で耐食性と耐照射性に優れるハイエントロピー合金(HEA)を用いて、既存構造材料と共存可能な新規低放射化材料を創製する。製造手法として、近年注目されている金属積層造形(AM)法による低放射化HEAの作製及び放電プラズマ焼結(SPS)法によるHEA/既存材料の接合技術の確立を目指す。AM法による成形が確認されたHEAを基盤材料として、高温で組織的かつ機械的に安定なHEA構造体の成型プロセスを構築し、さらに既存構造材料である鉄鋼材料との良好な接合体が得られる最適条件を探索する。構造体の健全性を評価する手法として、機械的特性、耐摩耗性、耐応力腐食割れ特性、高温水蒸気腐食(酸化)特性、耐照射性評価を採用し、既存の原子炉材料と比較して原子炉配管材料としての優位性及び成立性について検討する。 |
新発想型(若手):計3課題
No. | 提案課題名 | 研究代表者 [所属機関] |
参画機関 | 概要 |
---|---|---|---|---|
1 | 水の放射線分解を模擬するシミュレーションコードの開発 | 松谷 悠佑 [北海道大学] |
北海道科学大学 | 電離放射線による生体への放射線影響を決定する場合,物質との相互作用(物理過程)ならびにラジカル生成と拡散(化学過程)の理解が重要である。特に,生体における化学過程による寄与は約70%と大きい一方,放射線のタイプや,温度,気圧など様々な因子により影響を受けることが知られる。化学過程では,照射後10-7秒以内における早期のラジカルの動体を把握することが重要と知られるが,ラジカル収量の実験的測定は困難であり,シミュレーションによる計算科学的アプローチが重要だが,それらを考慮して無償公開されているコードは存在しない。そこで,本研究では,放射線のタイプや温度,気圧を総合的に考慮したシミュレーションコードの開発に取り組む。本研究が完遂すれば,放射線の化学過程を高精度で評価可能となるほか,開発したコードは汎用放射線科学コードPHITSへ実装することで世界中の研究者が無償で利用することが可能となり,生命科学や原子力科学への応用や発展が期待できる。 |
2 | ナノ粒子燃料に向けた表面自由エネルギーを考慮した熱力学平衡状態図の開発 | 小林 大志 [京都大学] |
日本原子力研究開発機構 | 高燃焼度の核燃料では、UO2結晶の微細化が進行し、微小粒子からなる高燃焼度組織(HBS)が現れ、構造変化によるFPガス放出やペレットの体積増加によるPCMIをもたらすことが課題である。しかし近年、微細化したHBSはnmサイズの結晶からなる構造的な特異性があり、FPガスの保持性能や耐照射欠陥において、低燃焼度のUO2燃料よりも優れた特徴を有する可能性が指摘されている。本研究は、nmサイズの微細構造を持つナノ粒子燃料の実用化を念頭に、HBSに関する熱力学的特性を評価するための革新的な試みであり、ナノ粒子燃料の熱力学的な安定性を明らかにするため、微細構造の安定性を評価する新たな状態図を整備する。これには、従来のバルク相(μmサイズ粒子)の自由エネルギーに、新たにナノ粒子の表面自由エネルギーの概念を考慮に入れたGibbsエネルギー関数の提案が不可欠である。Gibbsエネルギー関数の実験的知見に基づいて、実用性の高い新たな熱力学平衡状態図の構築を目指す。 |
3 | 複数液滴体系の水蒸気爆発に関する実験および数値解析による研究 | 神谷 朋宏 [日本原子力研究開発機構] |
岐阜大学 | デジタルトランスフォーメーションの実現の鍵となる水蒸気爆発解析コードの信頼性を向上することが求められている。水蒸気爆発解析コードの信頼性向上のため重要なことは簡略化モデル開発のための現象解明である。しかしながら、水蒸気爆発で発生する衝撃波はシミュレーションで予測したい対象であるにも関わらず、その形成・伝播過程は既往研究であまり注目されてこなかった。そこで、当該研究では、複数の溶融スズ液滴を水中へと滴下することで形成される液滴列に対して衝撃波を干渉させて水蒸気爆発を引き起こす実験を実施し、さらにそれの数値解析による再現を試みる。これによって、水蒸気爆発で発生する衝撃波の形成・伝播メカニズムの解明を目指す。また、水蒸気爆発では酸化によって非凝縮性ガスである水素が発生することが知られ、それの衝撃波伝播に対する影響は重要であると国際的なプロジェクトで指摘された。当該研究では、実験および数値解析の両アプローチを使用して非凝縮性ガスが衝撃波伝播に与える影響についても評価する。 |