研究分野

令和3年度 国家課題対応型研究開発推進事業 原子力システム研究開発事業 選定課題

基盤チーム型(一般):計3課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 高出力密度高温ガス炉におけるマルチフィジクス挙動のV&V 岡本 孝司
[東京大学]
東京工業大学、日本原子力研究開発機構 高温ガス炉HTTRで用いられている黒鉛スリーブ付き黒鉛コンパクト燃料に対して、スリーブを除去したSiCコンパクト燃料とすることで、熱除去性能が上昇し、出力密度の向上が期待できる。一方、SiCも酸素と反応するため、高温ガス炉で考慮すべき空気侵入事故時の安全性を確認することが必須である。事故時及び通常時のSiC酸化は、化学反応、反応生成物(CO 等)の物質移行、冷却材流動、輻射伝熱など、極めてマルチフィジクスである。このため、SiC酸化反応に関する解析コードを整備するとともに、そのV&V手法を確立し、高出力密度高温ガス炉の可能性を追求する。東大のV&V、東工大のSiC、JAEAの高温ガス炉に関する経験と知見をチームとして融合し、基盤技術の確立を目指す。
2 3D造形革新燃料製造のシミュレーション共通基盤技術 瀬川 智臣
[日本原子力研究開発機構]
フローサイエンスジャパン、佐賀大学、シンターランド、理化学研究所 最近、革新的なセラミック造形技術として三次元(3D)プリンティング技術の開発が行われ、産業界でも導入されつつある。本研究では、3D造形技術を適用して、新型炉用の燃料体の製造技術開発を行う。研究対象の燃料体は、除熱効率を向上させることによって安全性を高めた一体型の燃料体であり、グラファイトとシリコンカーバイトから構成される。この燃料体の3D造形製造プロセスとして、粒子スラリー技術、光造形技術、スパークプラズマ焼結技術について、各工程の物理現象と、中性子照射による密度変化のモデル開発を通して、燃料製造と照射挙動を合わせたマルチスケール・マルチフィジックスシミュレーション技術に関する研究開発を実施する。このシミュレーション技術の開発によって燃料製造技術の開発を効率的に加速して進めることができる。
3 革新型原子炉開発のための核データ整備基盤の構築 堀 順一
[京都大学]
日本原子力研究開発機構、東京工業大学、近畿大学 革新型原子炉開発において、従来の炉型では経験のない構造材や減速材が用いられる場合、炉設計の検討が進むにつれて核データに対する新たな高度化ニーズが生じることが考えられる。特に現状として整備が十分なされていない熱中性子散乱則データについては、戦略的に整備していく必要がある。
そこで、革新型原子炉で核データの高度化の必要性が想定される代表的な材料、核種を選定し、基盤データを取得する。研究は、①微分測定、②積分測定、③評価済核データライブラリの整備及び炉設計への影響評価の3項目を並行して実施することにより、産業界からの要求に迅速且つ柔軟に対応し、必要な核データを高度化するスキームを構築する。

基盤チーム型(若手):計5課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 原子炉自在設計のためのテーラード溶接シミュレーションシステムの構築 門井浩太
[大阪大学]
日本原子力研究開発機構 原子炉の安全性の確保と高機能化に資する自在な設計による新型原子炉設備の製造実現を目的とし、素材や部品の多種多様な組合せの異種材料溶接に対し、設計段階から溶接プロセス、溶接割れ性、耐応力腐食割れ性などの溶接部性能までをワンスルーで予測する溶接プロセスシミュレーションシステムの構築を目指す。
溶接プロセスを考慮した材料学的・力学的挙動のCAE解析モデルを構築し、独創的な実験と分析、基礎学理に基づく溶接割れ、応力腐食割れの知識基盤を獲得することにより、科学的に溶接部の信頼性予測・診断が可能な設計、プロセス制御の指針の提供や自在な設計に資する溶接プロセス条件や材料選択の最適化の実現を目指す。
2 機械学習を利用した計算科学による照射損傷予測・脆化評価技術の整備 熊谷 知久
[電力中央研究所]
東京理科大学 機械学習技術を利用した計算科学手法を用いたマルチスケール計算機シミュレーションにより、小型モジュール炉の中性子照射損傷を予測し、これに基づいた破壊靭性評価を行う数値解析技術を整備する。まず、第一原理計算による活性化エネルギーを学習するニューラルネットワークに基づくキネティックモンテカルロ(kMC)法の開発により、材料の照射損傷予測を可能とする。このkMC法から得られた照射損傷組織における転位の挙動に及ぼす影響の強度と転位の易動度(負荷応力に対する転位速度の勾配)を、機械学習型の原子間ポテンシャルを用いた古典分子動力学(MD)法によって算出し、これをパラメータとした離散転位動力学法解析(個別の転位の挙動を模擬する計算手法)により、照射損傷組織における破壊靭性値を計算する。
3 MA抽出のためのフッ素系スーパー溶媒の探査 中瀬 正彦
[東京工業大学]
京都大学、日本原子力研究開発機構、三菱重工業 再処理工場の安全性を飛躍的に高めるため、また課題となっている使用済みMOX燃料再処理、高燃焼度化燃料再処理におけるMA分離を達成すため、高い耐放射線性や引火点がないといった優れた特性、固有の安全性を有する“フッ素系スーパー溶媒”をマテリアルズ・インフォマティクス(MI)の手法を活用して探査する。
研究結果をデータベース化し、重回帰分析などの統計解析モデルを作成することで未知の溶媒における特性と分配比、工学適用性まで推察可能なスキームの構築を目指す。メーカーによる社会実装的な観点からの工学適用性も緻密に検討することで、社会のニーズに則った“フッ素系スーパー溶媒”による再処理工程、原子力システムの革新を狙う。
4 高温ガス炉の出力分布測定のための核計装システムの開発 深谷 裕司
[日本原子力研究開発機構]
ANSeeN、静岡大学 高温ガス炉を効率的に運用するためには、実証炉もしくは、黎明期の商用炉における、炉内出力分布測定による炉内燃料管理の実施が望ましい。一方で、入り口温度ですら600℃程度の設計となっている商用高温ガス炉に適した炉内計装が存在せず、開発が必要である。また、黒鉛減速体系による中性子の平均自由工程の大きさから、炉外計装を原子炉圧力容器の外周を周回させることにより、CTの原理に類似した手法による炉内出力分布のアンフォールディングができる見込みを得ている。また、炉外計装との相補的利用を目的に炉内計装による測定技術も併せ、ハードウェア・ソフトウェアの両面から炉外・炉内計装の開発を行う。また、炉外計装におけるアンフォールディングはノイズに対して弱い傾向が予測されており、AI技術を応用した処理の安定化を試みる。
5 人工知能技術と熱流動の融合によるデータ駆動型プラント安全評価手法の開発 三輪 修一郎
[東京大学]
電気通信大学、日本原子力研究開発機構、原子力エンジニアリング 近年、熱水力計測機器の発展等から、多次元かつ多量のビッグデータが整備され、AI技術と熱流動の技術統合プラットフォーム構築が期待されている。しかしながら、AI技術により達成可能な具体的且つ効果的な解析例は少なく、熱流動分野における機械学習の有効性、優位性が未解明なのが現状である。本研究においては、画像認識と物体検出を軸としたAI技術に着目し、データベースに潜んだ関係性を捉える「データ駆動型アプローチ」を用いることで、AI技術と熱流動の融合による安全評価手法の開発を目指す。
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