研究分野

令和2年度 国家課題対応型研究開発推進事業 原子力システム研究開発事業 選定課題

基盤チーム型:計4課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 金属被覆ジルコニウム合金型事故耐性燃料の開発 阿部 弘亨
[東京大学]
東北大学、日本原子力研究開発機構、ニュークリア・デベロップメント 事故耐性燃料において、短期的に最も実現性が高いとされる金属被覆ジルカロイ合金に着目し、その開発指針の構築と最適な材料の開発を目的とする。当該材料システムは、金属被覆に関する知見は皆無に近く、特に金属被覆と被覆/基材界面における現象を対象として、科学的合理性および説明性の高い材料開発指針を構築するに十分な研究体制を構築し、実用化に向けた知見を整える。そして、当該材料に関し物質選択、製造法、機械強度、腐食特性、照射特性といった燃料被覆管開発に必要十分な知見を習得する。
2 原子炉構造レジリエンスを向上させる破損の拡大抑制技術の開発 笠原 直人
[東京大学]
日本原子力研究開発機構、防災科学技術研究所 破損発生防止を目的とした従来の構造強度技術の対象は、単一機器の破損発生までであった。
破損発生後の影響の緩和を目的とした本研究では、プラントシステムにおける破損発生後の挙動を対象としている。計算科学技術と模擬材料試験技術を駆使し、安全性への影響の小さい破損モードを先行させることにより周囲の機器の荷重やエネルギーを低減させ、安全性へ影響の大きい破損モードへの拡大を抑制する、革新的な構造強度技術を開発する。
3 脱炭素化・レジリエンス強化に資する分散型小型モジュラー炉を活用したエネルギーシステムの統合シミュレーション手法開発 小宮山 涼一
[東京大学]
日本エネルギー経済研究所、日本原子力研究開発機構、日揮、三菱重工業 従来のエネルギー技術最適導入戦略分析手法は、電力部門の時間および空間的解像度が低く、急増する再生可能エネルギー発電の出力間欠性、SMRの工学的情報や動的挙動、地域間連系を十分考慮できず、SMR導入戦略は定性的な議論に留まっていた。
本研究では、大型原子炉の見通しも踏まえた上で、SMR導入ポテンシャルの地域性や負荷追従性能等の工学的制約条件、ウランやプルトニウム需給バランスを考慮した最適導入シナリオを導出可能な統合したシミュレーション手法を開発する。
4 多様な革新的ナトリウム冷却高速炉における統合安全性評価シミュレーション基盤システムの開発 内堀 昭寛
[日本原子力研究開発機構]
日立GEニュークリア・エナジー、東京都市大学、大阪大学 革新的原子力システムであるナトリウム冷却高速炉を対象とし、シビアアクシデントを含めた安全性評価を、炉内/炉外を含め一貫した1つの数値解析により評価する基盤技術を構築するものである。
本基盤技術は産業界への提供を前提とし、ユーザー利便性にも重点を置き、AI等を用いた最適解探索の開発、入力のGUI化、解析作業の品質保証活動の自動化を行うと共に、PRISM型原子炉への適用を行う。
また燃料(UO2、金属)等の溶融時の熱物性について最新技術での計測を行い、数値解析精度の向上に資すると共に基盤データベースの拡充を行う。

ボトルネック課題解決型:計4課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 過酷事故対応電子機器の実用化に向けた耐放射線・高温動作半導体デバイスの高性能化 梅沢 仁
[産業技術総合研究所]
北海道大学、福島工業高等専門学校 原子炉格納容器内で過酷事故に対応可能な耐環境型電子デバイスおよびエレクトロニクス回路の製造技術は現状存在せず、典型的なボトルネック課題となっている。本研究では原子炉の安全性を高めるため、課題解決の要となるダイヤモンド電界効果トランジスタの高性能化とSiC集積回路技術の開発を進め、事業終了後ただちに耐環境型エレクトロニクス回路の実機開発に着手可能とすることを目指す。
2 可搬型950keV/3.95MeVX線・中性子源による福島燃料デブリウラン濃度評価・仕分けとレギュラトリサイエンス 高橋 浩之
[東京大学]
福島大学 2024年の燃料デブリ本格取り出しに備え、ユニット缶入り燃料デブリを格納容器直外のその場で、迅速にU濃度約5%以上か未満を判定し、以上であれば核物質、未満であれば放射性廃棄物と仕分けができる可搬型の装置システムを実現すると共に、可搬型 3.95MeVX線・中性子源の使用場所変更の規制緩和も達成する。
3 国内の原子力インフラを活用した医用RIの自給技術確立に向けた研究開発 高木 直行
[東京都市大学]
日本医用アイソトープ、金沢大学、三菱重工業、日本原子力研究開発機構 商用PWR および高速実験炉常陽を用いて、診断用のRIとして需要の高いMo/Tcと、α内用療法に用いられる短寿命α核種(Ac-225)の生成と供給を行う国内自給技術の確立に向けた技術開発を行う。診断・治療用 RI の国内自給技術の社会実装を図るとともに、軽水炉・高速炉利用におけるイノベーションと原子炉に対する社会受容の改善を目指す。
4 地震荷重を受ける配管系の非弾性を考慮した高精度シミュレーションモデルの構築 中村 いずみ
[防災科学技術研究所]
横浜国立大学 原子力施設の配管系を対象とし、終局強度の評価も含めた非弾性挙動を再現できる高精度シミュレーションモデルを構築する。また、世界最大の震動台であるE-ディフェンスを用いた検証実験を実施し、シミュレーションモデルのV&Vに必要となるデータを取得し、デジタルツインに基づく耐震信頼性評価法に必要な基盤データの構築を進める。

新発想型:計7課題

No. 提案課題名 研究代表者
[所属機関]
参画機関 概要
1 金属積層造形による新規低放射化ハイエントロピー合金の作製 橋本 直幸
[北海道大学]
日本原子力研究開発機構 金属積層造形法(3Dプリンティング)を用いて、次世代エネルギー炉に応用可能な、高温で耐照射性に優れる低放射化ハイエントロピー材料の創製を目指す。
粉末床積層造形である電子ビーム積層造形(SEBM)および粉末レーザ積層造形(SLM)の2方法を採用し、各成型試料の機械的特性、耐照射性、高温水腐食特性についてアーク溶解で作製した同成分の材料と比較することで、金属積層造形による新規材料作製の成立性を検証する。
2 原子炉中性子リアルタイムモニタリングのための太陽電池型線量計の開発 小林 知洋
[理化学研究所]
東北大学、木更津工業高等専門学校、宇宙航空研究開発機構、量子科学技術研究開発機構 中性子のリアルタイム監視により、臨界状況を正確に把握する必要があるが、その計測システムは低コストである必要がある。高温・高線量γ線環境において中性子のみの信号をリアルタイムで長時間正確に測定可能な既製の測定機器はない。本研究ではSMRへの応用を目的とした簡素で小型・低コストかつ広いダイナミックレンジを有する新たな中性子検出器を提案する。
3 次世代フルセラミックス炉心設計を見据えた多重防食技術の基礎基盤研究 近藤 創介
[東北大学]
産業技術総合研究所、物質・材料研究機構 次世代軽水炉や、小型モジュール炉、低減速炉など高温・高腐食性の新型炉炉心において、金属を用いない防食技術として、産総研のセラミックスへのセラミックス被覆技術と東北大の不対電子の不活性化技術による、使用可能なセラミックス炉心材料を実現するための多重防食技術の開発を目指し、物材機構の最先端セラミックス被覆試験技術による徹底的な強度評価によって、炉心のフルセラミックス化を実現させる技術基盤を形成する。
4 人工知能(AI)技術を取り入れた核燃料開発研究の加速 小無 健司
[東北大学]
福井大学、日本原子力研究開発機構、産業技術総合研究所 核燃料開発研究へAI技法を取り入れることにより、これまでの実験データ中心の開発スタイルから理論先行型の効率的な開発スタイルへの転換を目指す。本AI技法は、汎用的なもので有り、本課題の成果によって他の原子力分野への波及効果も期待出来る。理論計算のみならずその計算結果の妥当性を評価するために最先端の高輝放射光度実験を実施し、理論計算結果と比較する。
5 スピン熱電発電素子による同位体発電システム開発に向けた基盤構築 家田 淳一
[日本原子力研究開発機構]
- スピントロニクス技術に基づくスピン熱電素子と、熱源としての放射性同位体の組みあわせは、宇宙探査機用電源等への次世代発電方式として期待できる。
これまでにスピン熱電素子の放射線耐性に関わる研究は行われてこなかったが、最近、研究代表者らが先駆けてその知見を明らかにしている。将来的に使用済核燃料等から生じる熱を安全に有効活用する技術の開発につなげるため、本研究にてその研究基盤構築を加速する。
6 放射性廃液のガラス固化妨害元素(白金族金属、モリブデン)を対象にしたバイオ湿式分離技術の創出 小西 康裕
[大阪府立大学]
- 放射性廃液のガラス固化妨害成分(Pd, Ru, Rh, Mo)に対する新しい分離剤としてパン酵母を活用し、バイオ分離機能に及ぼす放射線照射の影響を把握するとともに、従来の分離技術の問題点を払拭し、より簡便な操作方式でより低コストに、より高速・高効率に、ガラス固化妨害成分を分離・除去できるバイオ分離技術を創出する。
7 マテリアルズ・インフォマティクスによる核燃料開発 黒﨑 健
[京都大学]
大阪大学 独自に作り上げた実験データに基づく各種材料の物性値ビッグデータを機械学習することで、膨大で多様なウラン化合物の中から核燃料に適したものを見出す。さらに、見出したウラン化合物を実験的に合成し、特性を評価することで、マテリアルズ・インフォマティクスによる核燃料開発の妥当性を検証する。
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