
原子力システム 研究開発事業 成果報告会資料集
液化ガスを媒体とする使用済燃料からのアクチニド抽出法の開発
(受託者)国立大学法人名古屋大学
(研究代表者)澤田佳代 エコトピア科学研究所 准教授
(研究代表者)澤田佳代 エコトピア科学研究所 准教授
1.研究開発の背景とねらい

本研究では,ウラン及びランタニドの酸化物を模擬燃料として使用し,これらを液化二酸化窒素を媒体として硝酸塩へ転換する技術および液化二酸化炭素等の媒体中での硝酸塩からの金属抽出後の相互分離技術の開発を行う.
2.研究開発成果
2−1.硝酸塩転換技術の開発二酸化ウラン粉末90 mgを空気雰囲気下で二酸化窒素を触媒にして523 Kで60分間酸化させた後,液体二酸化窒素10 cm3と313 Kで60分間接触させた.得られた反応生成物は黄色の水溶性の物質であり, X線回折パターンには硝酸ウラニル・三水和物(UO2(NO3)2・3H2O)の存在を示すピークが検出された.

2−2.アクチニド抽出・分離技術の開発
アクチニド抽出・分離に必要となる相平衡データを測定するため,TBP硝酸ネオジム錯体とTBP硝酸セリウム錯体(表3),TBP硝酸ウラニル錯体の溶解度データを取得した.図3に313 KにおけるTBP硝酸ネオジム錯体とTBP硝酸ネオジム錯体の二酸化炭素との相平衡図を示す.この図に示された線より上の圧力では二酸化炭素と両錯体は均一な一相状態を形成し,下の圧力では二相に分離することを意味している. TBP硝酸ネオジム錯体とTBP硝酸セリウム錯体の溶解度を比較すると,TBP硝酸セリウム錯体の方がTBP硝酸ネオジム錯体よりも二酸化炭素へ溶解しやすいことがわかる.これらの溶解度の違いを利用して圧力を変化させることでネオジムとセリウムの分離を行った.回収した液相,気相試料中のネオジムとセリウムの比を図4に示す.図中に破線で示された値は図3の平衡データから見積もられたそれぞれのネオジムとセリウムの比である.この結果より,溶解度の違いにより圧力を変化させることで抽出した元素の分離が可能であることを示すことができた.
2−3.まとめ
これまでの研究より,液体二酸化窒素を用いた二酸化ウランの硝酸塩転換が可能であり,二酸化炭素を用いたアクチニドの抽出・分離が可能であることが明らかとなった.これらの知見は,放射性廃棄物の発生を低減する新たな処理法の確立の可能性を示唆するものである.
3.今後の展望
今後,ウラン及びランタニドの酸化物を模擬燃料として用いて硝酸塩転換および抽出・分離の一連の化学操作を実施し,全体を通しての評価を行い,まとめる予定である.4.参考文献
(1) 島田,小雲,石原ら, 日本原子力学会和文論文誌, 6
(2), 214-224, 2007. 2) 島田,小雲,石原ら, 日本原子力学会和文論文誌, 6
(3), 333-342, 2007. 3) T. Shimada, S. Ogumo, K. Sawada, et al., ANALYTICAL SCIENCES, 22 (11), 1387-1391, 2006.