
原子力システム 研究開発事業 成果報告会資料集
プラズマを用いたトリチウム化炭化水素の分解回収法の研究開発
(受託者)国立大学法人九州大学
(研究代表者)片山一成 大学院総合理工学研究院 助教
(研究代表者)片山一成 大学院総合理工学研究院 助教
1.研究開発の背景とねらい

2.研究開発成果
2-1.高周波プラズマ発生装置の製作と分解試験ヘリウムプラズマ中での炭化水素分解反応に伴う炭素・水素物質移動現象の定量的把握を目的として高周波プラズマ発生装置(図2参照)を製作した。メタン分解反応速度の定量を行うため、プラズマ発生部は流通式管型反応器としての形状を有する。また、質量分析計及び発光分析器を備え、出口ガス成分の観測やプラズマ中でのイオン・ラジカルの観測が可能である。
メタン濃度1%以下のメタン混合ヘリウムガスに高周波を印加してプラズマ化させ、高周波印加後のガス中の組成変化を質量分析計で観測した。その結果、数10W程度の低印加電力においても、95%以上のメタンが分解され得ることが明らかとなった。また、分解反応はメタン濃度が低いほど効果的に進行する傾向が見られた。なお、プラズマ通過後のガス中には、水素に加えてエチレンやアセチレンが観測されたが、平均滞留時間を大きくとることで、正味の水素抽出率(出口炭化水素中水素/入口炭化水素中水素)、90%以上確保することが可能であった(図3参照)。このことは、プラズマ通過前後でのヘリウム冷却材中のトリチウム化炭化水素濃度を一桁以上減少させ得ることを示唆するこれらの結果から、トリチウム化炭化水素からのリチウム回収システムが成立する見通しを得た。
2-2.シミュレーションコードの作成

2-3.析出炭素膜中水素濃度の定量
プラズマ中で高効率にメタンが分解されるため、プラズマ容器内での炭素の析出が観測された。析出炭素膜のSEM画像を図5に示す。10μm程度の粒子が重なり合うように成長していることがわかる。析出炭素膜の一部をアルゴン雰囲気で800℃まで加熱し、放出される水素量から、膜中の水素濃度を測定した。その結果、原子比H/Cで0.35程度の水素が含まれていることがわかった。分子状水素の回収を目的とするのであれば、これは懸念すべき問題であるが、ヘリウム冷却材からのトリチウム回収の観点からは、気相から固体内へとトリチウムを移行させているのであり、トリチウム除去のひとつの手法と言える。
2-4.水素透過装置の作製と透過試験
炭化水素及び析出炭素による水素透過の阻害作用を評価するため、水素透過装置を作製した。水素透過部は、石英管にPd-25%Ag管を備えた二重管型となっている。また、炭素発生源としてガス流路上流側に誘導結合型プラズマ発生部を設けた。ヘリウムガスを導入して、プラズマ点火試験を行ったところ良好なプラズマを得た。また、Pd-Ag管の水素透過性能を確認するため、大気圧下での水素透過試験を300℃、400℃において行った。水素導入直後の透過速度は、文献値と同程度であったものの、水素流通開始後10時間程度経過した後も定常に達する事無く、減少し続けた。これは、導入ガス中の不純物水蒸気による阻害作用と考えられる。水蒸気による効果を抑制した上で、炭化水素及び析出炭素による水素透過の阻害作用を評価する必要があり、引き続き試験を実施する。