原子力システム研究開発事業
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(資料5)中間・事後評価の結果 軽水冷却スーパー高速炉に関する研究開発
原子力システム研究開発事業における平成17年度採択課題中間・事後評価の結果について

原子力システム研究開発事業−基盤研究開発分野−中間評価 総合所見公表用

1.研究開発課題名

 軽水冷却スーパー高速炉に関する研究開発

2.研究開発の実施者

機関名:国立大学法人東京大学  代表者氏名:岡 芳明
機関名:国立大学法人九州大学  代表者氏名:森 英夫
機関名:独立行政法人日本原子力研究開発機構  代表者氏名:秋場真人
機関名:東京電力株式会社  代表者氏名:後藤正治

3.研究開発の概要

 超臨界水を冷却に用いることで発電効率向上と原子炉システムの簡素化・コンパクト化を実現しうる革新的原子力システムとして軽水冷却スーパー高速炉(以下スーパー高速炉という。) の概念を開発し、その概念としての成立性を示すとともに、伝熱流動と材料に関する主要課題について実験をおこない、開発の基盤となるデータベースを構築することを目標とする。
 この目標を達成するために本研究では以下の研究開発をおこなう。
 (1)プラント概念の構築
 (2)炉心伝熱流動等に関する研究開発
 (3)高耐久性燃料被覆管材料等の開発

4.研究開発予算

平成17年度  69,264千円
平成18年度  535,912千円
平成19年度  542,925千円
平成20年度(予定)  289,380千円
平成21年度(予定)  191,230千円

5.研究開発期間

 平成 17年 12月 1日〜 平成 22年 3月31日 (5年計画)

6.H18年度までの目標

【研究開発項目1】プラント概念の構築
①燃料・炉心検討
1)燃料・炉心・高温構造設計
 グリッド計算機の並列計算の性能を確認し、高温構造概念の検討と課題を抽出する。リファレンスとなる炉心(基本炉心と呼ぶ)の燃料棒を設計する。3次元核熱設計手法により基本炉心を設計する。1/6サブチャンネル体系の詳細伝熱流動計算をおこなう。高温構造設計用に発生メカニズムを検討して応力を推定し、高温構造健全性を確保するための構造を具体化する。
2)核変換性能解析法整備
 スーパー高速炉の核変換性能評価に必要となる燃焼計算コードを整備し、性能を確認する。核変換計算用炉定数ライブラリを作成し、適用性を評価する。
3)バックエンドリスク評価
 バックエンドリスク指標を設定し、指標の妥当性を考察し、実験データを取得する。リスク指標を用いてバックエンドリスクを評価し、重要な項目と核種を明らかにし、重要核種の地下環境中での振舞い予測のための実験データを取得する。
4)3次元2流体モデルによる熱流動計算コード整備
 3次元2流体モデルによる熱流動計算コードに対し,超臨界圧領域を含む水物性値ルーチンを整備する。水物性値ルーチンを整備したコードを用い、既存の円管熱伝達試験を解析し、予測性能を評価する。また、境界適合格子(BFC: Boundary-Fitted Coordinates )機能を整備したコードによるテスト計算をおこない、燃料集合体の流路形状を効率的に解析できることを確認する。
5)原子炉特性に関する考察
 沸騰水型原子炉とスーパー高速炉の特徴を参考として、スーパー高速炉の原子炉特性に関して考察すべき項目について検討し、この検討結果をもとに沸騰水型原子炉とスーパー軽水炉を参考として、スーパー高速炉の燃料設計に関して考察する。
②制御・安全性検討
 超臨界流体の凝縮特性解析のためのグリッド計算機の並列計算性能を確認する。基本炉心の動特性解析および制御系の設計、安全系の検討・設計をおこなう。模擬流体の小気泡について超臨界流体凝縮特性を解析する。

【研究開発項目2】炉心伝熱流動等に関する研究開発
① 模擬流体を用いた炉心伝熱流動等に関する研究開発
 基礎伝熱特性試験、燃料棒群特性試験および亜臨界圧限界熱流束試験に共通して用いる模擬流体伝熱流動試験装置を、設計に基づき製作する。基礎伝熱特性と燃料棒群特性試験をおこない、管内流における上昇流と下降流の違い、また管内流とバンドル流れの違いにおける熱伝達劣化の発生に関するデータを得る。
1)基礎伝熱特性試験
 装置と円管試験体を設計する。模擬流体伝熱流動試験装置と円管試験体を製作し、19年度にかけて定常時の試験をおこなって、燃料棒群特性の解明の基礎となる熱伝達データを取得する。
2)燃料棒群特性試験
 簡略な形状のグリッドスペーサを有するバンドル試験体Iを製作し、これを用いて平成19年度にかけてバンドル伝熱流動の基礎流動データを取得する。グリッドスペーサ形状の異なるバンドル試験体IIを設計する。さらに、バンドルの流れを模擬した模擬流動試験装置を製作し、平成19年度にかけて模擬流動試験をおこない、グリッドスペーサが流れの乱れに及ぼす効果を検討する。
3)亜臨界圧限界熱流束試験
 平成19年度の前半に円管試験体を用いた限界熱流束データを取得する。その後バンドル試験をおこなう。
4)放出凝縮特性試験
 平成19年度に凝縮特性試験装置を設計製作し、その後凝縮特性試験をおこなう。
② 超臨界水を用いた炉心伝熱流動等に関する研究開発
1)基礎伝熱特性試験
 単管形状の基礎伝熱試験部(I)を製作して、超臨界圧水による流動試験データを取得する。燃料棒を模擬したヒータを持つ単ピン形状の基礎伝熱試験部(II)を製作して、超臨界圧水による伝熱流動試験をおこない、定常時における熱伝達係数評価のための基礎データを取得する。
2)燃料棒群特性試験
 平成19年度6月までに、模擬流体を用いた伝熱試験結果などを反映して、燃料棒集合体を模擬した燃料棒群特性試験部を設計し、仕様書を作成する。

【研究開発項目3】高耐久性燃料被覆管材料等の開発
①炉心材料開発
1)炉心材料開発
 スーパー高速炉炉心での使用環境への適合を目指した第一次試作材として改良PNC1520とその対照材料の標準PNC1520を製造し、それを評価する。第一次試作材である改良PNC1520と標準PNC1520の高温クリープ試験をおこない、これら材料の時間強度特性を評価する。また、これら材料の超臨界水中全面腐食試験、高温高圧水中低ひずみ速度引張試験(SCC感受性試験)および中性子照射済みPNC1520の高温高圧水中腐食特性試験をおこなう。また、中性子照射済みPNC1520の超臨界水中全面腐食試験装置を製作し、照射後試験片を用いた試験に先立つ予備試験をおこなう。
2)複合環境照射試験
 超臨界環境、高温水環境ならびに高温気相環境における超臨界腐食試験装置と重照射研究設備のバン・デ・グラフ加速器に付加する高温にて実験可能な照射試験装置を整備し、腐食試験と照射試験データを取得する。超臨界水環境腐食試験と高温イオン照射試験をおこない、第一次試作材の表面形態変化や内部構造変化を観察する。腐食試験中の圧力調整のための超臨界腐食試験装置用気体注入装置を製作する。高温高湿セル中でのイオンビーム照射により腐食と照射を重畳した実験をおこない、データを取得する。
②高耐熱性断熱材の開発
1)高耐熱性断熱材の開発
 高耐熱性断熱材料の候補材料を選定し、その粉末を用いて密度が異なる焼結体を作製する。超深度カラー3D形状測定顕微鏡で微細組織を観察し集合構造に関する知見を得る。候補材料粉末を用いて、密度が異なる焼結体を作製し、その微細組織を観察することにより、集合構造に関する知見を得るとともに、これらの試料の熱伝導率測定をおこない、集合組織と熱伝導率との関係に関する知見を得る。
2)高耐熱性断熱材の照射挙動評価
 平成19年度前半では照射材評価のデータとなる焼結密度の異なる非照射材の熱定数を測定する。
③溶出特性評価手法の開発
 溶出特性評価手法の開発に必要な炉心材料溶出挙動基礎評価試験装置(超臨界ループ試験装置)を設計する。設計した試験装置を製作し、ステンレス系の非放射化材料の溶出特性の基礎データを取得する。
 平成19年度以降に計画している放射化材料溶出特性測定のためのガンマ線計測システムの組み上げと稼動試験をおこなう。

7.これまでに得られた成果

【研究開発項目1】プラント概念の構築
①燃料・炉心検討
1)燃料・炉心・高温構造設計
 詳細伝熱流動計算のために導入したグリッド計算機の計算格子生成処理時間ならびに数値流体計算の並列処理時間を評価し、並列計算性能を確認した。炉内流動などを考慮して高温構造概念を検討し設計上の課題を抽出した。基本炉心の燃料棒の基本諸元として、熱的、機械的、流体力学的な制約条件の中での設計可能範囲を明らかにし、その範囲内で高出力密度が得られるように燃料棒の発熱長、外径、ピッチ/外径比(P/D)、被覆管肉厚などを決定した。燃料棒設計を基に、3次元核熱設計手法およびサブチャンネル解析コードを用いて、燃料集合体配置・交換パターン、冷却水流量配分などを調整し、設計目標と制約条件を満たす基本炉心を設計した。グリッド計算機を用いて、詳細伝熱流動計算に適用するためのメッシュ幅や乱流モデルを選定した。この結果を基に、1/6サブチャンネル体系を解析し、燃料棒の外径寸法とピッチ/外径比(P/D)が被覆管表面の周方向温度分布に対する影響についての知見を得た。高温構造設計は原子炉出口ノズル部および上部支持板部を検討対象に選び、外部電源喪失などの熱過渡条件で応力を推定し、応力発生メカニズムを検討し、構造健全性を確保するための具体的な構造を提案した。
2)核変換性能解析法整備
 3つの燃焼計算コードを整備し、実機軽水炉の使用済燃料に対する核種生成量の照射後試験ベンチマーク解析により、これらのコードの妥当性を確認した。燃焼計算コードを整備してスーパー高速炉に適用できるようにするため、基本炉心の設計仕様に基づき、スーパー高速炉に固有の中性子スペクトルを考慮した炉定数ライブラリを最新の核データに基づき作成し、作成ライブラリを使用したコード間の計算値比較により検証した。
3)バックエンドリスク評価
 バックエンドリスクを評価するための人間健康影響リスク指標を「高レベル廃棄物処分場から放出されて生物圏へ到達した核種に起因する被ばく線量率」と設定し、環境影響リスク指標を「高レベル廃棄物処分場から外部に放出されて環境中に存在する放射性核種の経口摂取毒性の総和」と設定した。核種輸送評価コードを用いてこれらの指標に基づくリスク評価の妥当性を考察した。また、重要核種の環境中での物理的・化学的な振る舞いを予測するため,熱力学パラメータを取得した。バックエンドリスク評価において重要な項目と核種を明らかにするために、PWRの燃料サイクルを想定したバックエンドリスクを評価した。人間健康影響リスク指標と環境影響リスク指標ともに、Cs-135、Np-237およびその崩壊系列に含まれるTh-229が大きく寄与するため、これらの核種が特に重要であることが確認された。廃棄物処分地層として有力な花崗岩の風化などによって生じるギブサイトに対するUO22+の吸着実験から、幅広い環境条件における分配比を取得した。
4)3次元2流体モデルによる熱流動計算コード整備
 3次元2流体モデルによる熱流動計算コードに対し,超臨界圧領域を含む水物性値ルーチンを整備し、解析コードを改良した。改良したコードが,亜臨界圧状態と超臨界圧状態の間を移行する現象を解析可能であることを確認した。改良したコードを用い、既存の円管熱伝達試験を解析し、予測性能を評価した。また、BFC機能を整備したコードによるテスト計算をおこない、燃料集合体の流路形状を効率的に解析できることを確認した。さらに,基礎伝熱特性試験などによる予測性能を評価するため,改良したコードに対し,超臨界圧状態を含むフレオン物性値ルーチンを整備し,妥当な計算がおこなわれることを確認した。
5)原子炉特性に関する考察
 沸騰水型原子炉とスーパー高速炉の特徴を参考にして、燃料設計、炉心設計、安全性、プラント特性の4項目を抽出し、スーパー高速炉の原子炉特性に関して考察するべき項目について検討した。燃料設計に関して考察し、燃料被覆管最高温度については、運転時の異常な過渡変化が生じたとしても燃料被覆管の過熱による破損に至らないよう、通常運転時の設計に十分な余裕をとることが必要であり、機械的強度については、運転時の異常な過渡変化を含めて燃料被覆管が機械的に破損しないことが必要であるとした。今後の課題として、炉心設計と連携して高速中性子照射や線出力密度の履歴を反映し、ペレットスエリングや核分裂生成物ガス放出などを考慮して通常運転時および運転時の異常な過渡変化時の燃料棒挙動を詳細に解析・検討することが必要という結果になった。
②制御・安全性検討
 超臨界流体凝縮解析に用いるグリッド計算機を導入し、計算格子生成処理時間を評価し、並列計算性能を確認した。ステップ状外乱を加えた場合のプラント基本動特性を評価し、スーパー高速炉は流量外乱に対して出力変化が小さく主蒸気温度変化が大きいことを明らかにした。この知見を基に、主蒸気温度を給水ポンプで、原子炉出力を制御棒で、主蒸気圧力を主蒸気加減弁で制御する方式とし、各種制御パラメータを決めた。設計した制御系を用いて、主蒸気圧力・主蒸気温度・出力の設定点および給水流量、給水温度の各外乱がプラント動特性に与える影響を評価した。制御系の働きによりプラントが数十秒〜2分程度で定常状態に収束することを確認した。貫流型システムの特徴を踏まえた安全確保の基本方針および安全系作動方針について検討し、安全系の構成、容量、作動条件を定めた。研究室で開発した粒子法に基づく沸騰・凝縮計算コードに模擬流体であるフレオンの物性値を導入しその解析を可能にした。模擬流体中の小気泡を対象に液体温度と飽和温度の差をパラメータに凝縮特性を解析し、凝縮過程が経験パラメータを用いず解析できることを世界ではじめて示した。

【研究開発項目2】炉心伝熱流動等に関する研究開発
①模擬流体を用いた炉心伝熱流動等に関する研究開発
 基礎伝熱特性試験、燃料棒群特性試験および亜臨界圧限界熱流束試験に共通して用いる模擬流体伝熱流動試験装置を、設計に基づき製作し、主に,基礎伝熱特性と燃料棒群特性試験をおこない、管内流における上昇流と下降流の違い、また管内流とバンドル流れの違いにおける熱伝達劣化の発生に関するデータを得た。
1)基礎伝熱特性試験
 基礎伝熱試験、燃料棒群特性試験、亜臨界圧限界熱流束試験をおこなう模擬流体伝熱流動試験装置の設計と基礎伝熱試験と亜臨界圧限界熱流束試験に使用する円管試験体を設計した。模擬流体伝熱流動試験装置と円管試験体を製作し、円管試験体を模擬流体伝熱流動試験装置に垂直に配置して組み込み、試験装置を完成した。平成18年度から平成19年度にかけて、定常における上昇流と下降流の伝熱試験をおこなって、基礎的な管内流熱伝達に及ぼす流動方向の違いに関するデータを得た。まず、実機と同じ定格条件では、上昇流と下降流ともに正常熱伝達の特性を示し、比較的高い熱負荷であっても、熱伝達の急激な劣化は生じにくいことを明らかにした。しかしながら、上昇流で低流量の場合、管壁温度の上昇をもたらす熱伝達劣化の発生に注意する必要があることを明らかにした。
2)燃料棒群特性試験
 簡略な形状のグリッドスペーサを有するバンドル試験体Iを製作し、模擬流体伝熱流動試験装置に垂直に組み込み、上昇流の定常試験をおこなって、燃料棒群伝熱特性のグリッドスペーサ効果を含む基礎データを得た。バンドル流れの場合、グリッドスペーサ直後の下流域では、熱伝達が良く、下流域と比べて伝熱が十分促進されることを確認した。さらに、燃料棒群のバンドル流れでは、基礎伝熱特性試験で得た円管内の同じ上昇流の場合と比較して、熱伝達劣化が生じにくいこと、また熱伝達の低下を生じない正常熱伝達では、管内流とバンドル流れでほぼ同じ伝熱特性を示すことを明らかにした。窒素ガスを流してバンドル流れを模擬する模擬流動試験装置を製作し、模擬流動試験として、5つのタイプのグリッドスペーサについて、伝熱と密接に関連する流れの乱れ測定試験をおこなった結果、羽根付きグリッドスペーサの流れ乱れ効果が最も大きく、グリッドなしの場合と比べて、サブチャンネル中心におけるロッド半径方向の乱れ強さが、出口直後で4倍も大きくなることがわかった。この結果を踏まえて、次の伝熱流動試験に用いるバンドル試験体IIのグリッドスペーサには、羽根付きグリッドスペーサを用いることとし、設計を完了した。
3)亜臨界圧限界熱流束試験
 円管試験体を用い,限界熱流束が生じやすい臨界圧近傍の圧力について、低質量速度の条件で試験を実施中であり、今後質量速度を変えて、限界熱流束の発生条件と発生後の最高管壁温度に関するデータを得る予定である。
4)放出凝縮特性試験
 模擬流体を使用して、超臨界圧の高温蒸気を低圧低温のプール液中に放出し、その際の凝縮挙動の基礎データを取得する試験装置の設計を完了した。超臨界圧高温蒸気の低圧液中放出凝縮に関する研究はこれまで世界的にも例がなく、装置を製作して平成19年度中に試験を開始する。
② 超臨界水を用いた炉心伝熱流動等に関する研究開発
1)基礎伝熱特性試験
 単管形状の基礎伝熱試験部(I)を製作して、超臨界圧水による流動試験データとして試験部の流量や圧力などのデータを取得した。具体的には、超臨界圧水の流動試験データとして試験部の流量、温度、圧力のデータを取得した。燃料棒を模擬したヒータを持つ単ピン形状の基礎伝熱試験部(II)を製作し、ダイバータ受入試験装置に設置して超臨界圧水による伝熱流動試験をおこない、定常時における熱伝達係数評価のための基礎データを取得した。具体的には、基礎伝熱試験部(II)に超臨界圧水を循環させて、模擬燃料棒ヒータが1本の場合の熱伝達係数評価のために必要な超臨界圧水の伝熱・流動データとして試験部の試験部温度分布、流体温度、圧力などのデータを取得した。
2)燃料棒群特性試験
 平成19年度6月までに、これまでの基礎伝熱特性試験の結果および模擬流体を用いた伝熱試験結果などを反映して、燃料棒集合体を模擬した燃料棒群特性試験部を設計し、仕様書を作成した。

【研究開発項目3】高耐久性燃料被覆管材料等の開発
①炉心材料開発
1)炉心材料開発
 PNC1520の高温クリープ強度特性および耐腐食性の向上を目指し、第一次試作材として改良PNC1520を製造した。また、第一次試作材との対照材料として、標準PNC1520も製造した。これら試作材の引張強度ならびに高温クリープ強度特性は両者の間でほぼ同じであった。試験前の両材料の微細組織に大きな差は無く、製管性に影響を与えないと考えられる範囲でのチタン増量では高温クリープ強度の改善は期待できないことが明らかとなった。また、これら試作材に対し腐食挙動試験として超臨界圧水中全面腐食試験をおこなった結果、試作材の腐食量は、同時に試験をおこなったSUS316L鋼の腐食量より少なく、改良PNC1520は標準PNC1520よりも耐食性が若干劣り、酸化膜表面のSEM観察からも標準PNC1520の方が酸化皮膜の安定性が高いことがわかった。
 試作材のSCC感受性試験の結果、粒界割れ破面は認められず、高温高圧水中での耐SCC性は両試作材ともSUS316Lと同等であった。中性子照射材の腐食量は同条件で試験をおこなったSUS316L未照射材の腐食量に比べ10倍程度大きくなることが明らかとなった。低ひずみ速度引張試験の結果、伸び量が小さいことが認められ、応力腐食割れの発生が示唆された。また、超臨界圧水腐食試験装置を製作し、予備試験により、問題なく照射後試験をおこなえる見通しを得た。
2)複合環境照射試験
 超臨界環境、高温水環境ならびに高温気相環境における超臨界腐食試験装置と重照射研究設備のバン・デ・グラフ加速器に付加する高温にて実験可能な照射試験装置を整備し、腐食試験と照射試験データを取得した。標準PNC1520と第一次試作材である改良PNC1520の超臨界水腐食試験をおこない、標準PNC1520の方が、侵食度が小さく耐食性がよいことを確認した。高温イオン照射試験をおこない、表面形態変化および内部構造変化を評価した。イオン照射試験では、両材料とも表面組織に未照射材との顕著な違いは認められなかった。超臨界腐食試験装置用気体注入装置および関連設備の動作検証試験をおこない、所定の性能を有していることを確認した。試作した高温高湿セルを用いてイオンビーム照射試験をおこない、腐食と照射が重畳したデータを取得した。
②高耐熱性断熱材の開発
1)高耐熱性断熱材の開発
 文献調査をもとに適切な候補材料としてジルコニアおよびジルコニアにイットリアを固溶させた安定化ジルコニアであるYSZを選定した。候補材料粉末を用いて、密度の異なる焼結体を作製し、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を導入してその微細組織を観察することにより、集合構造を確認した。高性能な高耐熱性断熱材料を創出するために、イットリアを固溶したジルコニア粉末を用いて、焼結温度および造孔材の添加により密度が異なる焼結体を作製した。焼結体試料の微細組織観察では、超深度カラー3D形状顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いて候補材料粉末の焼結体表面を観察した。また、レーザーフラッシュ法で焼結体全ての熱伝導率を測定した。これらの結果を基に、焼結温度を下げることや造孔材を添加することによって焼結密度が低下すること、および、焼結密度を下げることによって熱伝導率が小さくなること明らかにした。
2)高耐熱性断熱材の照射挙動評価
 (試験および評価は平成19年7月より開始するため、現時点での実績および得られた成果は無い。)
③溶出特性評価手法の開発
 溶出特性評価手法の開発に必要な炉心材料溶出挙動基礎評価試験装置の概念設計をおこなった。平成19年度から開始予定の放射化材料を用いた溶出特性試験に必要となる試験装置、ガンマ線計測系(NaIシンチレータ)、周辺機器などの準備を終了し、ステンレス系非放射化材料の溶出量を測定し、基礎データを取得した。

8.中間評価の過程における主な指摘事項

【全体】
  • 水冷却型高速炉に関する研究としては、その成立性を提示し必要な研究課題に取組んでおり、非常に優れている。計画通り着実に研究を進めていただきたい。材料開発に係わる部分はこれまでの軽水炉での経緯も含めて成立性の高い材料開発に結びつけてゆくことが将来性の上からも重要となる。実験により得られたデータを整理して、着実にデータベースに蓄積してもらいたい。

【研究開発項目1】プラント概念の構築(燃料・炉心検討)
  • 第4世代原子力システム国際フォーラムで世界的にも認められた炉であり、広範囲にシステム全体を検討評価しているのでこのまま進めてもらいたい。
  • 安全解析で使用するドップラー反応度、冷却材ボイド反応度等の動特性パラメータについては、炉心スペクトルが特徴的であることを踏まえて過去に実施された関連研究をレビューすることにより解析精度の不確かさを把握しておくことが望ましい。

【研究開発項目1】プラント概念の構築(制御・安全性検討)
  • 技術課題の解決を前提とした概念設計であり、十分な成果が見込める。
  • 異常過渡解析に際しては、上昇流、下降流等、炉内の複雑な流動伝熱の評価が必要となるため、伝熱流動実験により得られた知見を過渡流動解析コードに反映してもらいたい。

【研究開発項目2】炉心伝熱流動等に関する研究開発(模擬流体を用いた伝熱流動等に関する研究開発)
  • 伝熱特性試験と凝縮特性試験では、模擬流体として沸点が低くて扱いやすいフレオンを使った実験を計画・実施しているが、水とフレオンの相似性をよく検討して、実機で使う超臨界水への適応性を十分に評価してもらいたい。

【研究開発項目2】炉心伝熱流動等に関する研究開発(超臨界水を用いた炉心伝熱流動等に関する研究開発)
  • 模擬流体であるフレオンを使った実験結果を十分に評価し、超臨界水を使う実験に反映してもらいたい。

【研究開発項目3】高耐久性燃料被覆管材料等の開発(炉心材料開発)
  • この項目に関しては当初の計画通り、PNC1520をベースにした検討を進めてもらいたい。
  • 同時に、標準組成のPNC1520の耐食性向上の道筋を明らかにすることも考慮してもらいたい。

【研究開発項目3】高耐久性燃料被覆管材料等の開発(高耐熱性断熱材料の開発)
  • 実験により得られたデータを整理して、着実にデータベースに蓄積してもらいたい。

【研究開発項目3】高耐久性燃料被覆管材料等の開発(溶出特性評価手法の開発)
  • 本格的な試験は今後であるが、準備状況は順調である。
  • 実験により得られたデータを整理して、着実にデータベースに蓄積してもらいたい。

9.中間評価結果

  • スーパー高速炉の概念を開発し、その成立性を提示し、必要な技術課題に取り組んでおり、将来性も高いので是非継続すべきである。
  • また、材料開発に係わる部分はこれまでの軽水炉での経緯も含めて成立性の高い材料開発に結びつけてゆくことが将来性の上からも重要となる。実験により得られたデータを整理して、着実にデータベースに蓄積してもらいたい。

10.総合評価

(期待以上の成果が見込め継続すべき)
(ほぼ期待通りの成果が見込め継続すべきだが、計画について一部調整の必要がある)
(継続するためには、計画の大幅な見直しの必要がある)
(継続すべきではない)

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