研究開発課題名: 乾式再処理廃塩からのマイナーアクチニド回収に関する研究開発
代表研究者(研究機関名):鈴木達也(国立大学法人東京工業大学)
研究期間及び予算額:平成 18年度〜平成 20年度( 3年計画)23,533千円 |
項目 |
要約 |
1.事後評価 |
(目標達成度、研究開発計画、成果等)
【目標の立て方】
- 乾式再処理に湿式処理法を組み込むという新しい方法で、乾式再処理から出る塩廃棄物から、MA回収と廃塩精製の可能性を追求しようとした新規性のある取り組みで、狙いは適切であった。
- 乾式再処理技術開発において、廃塩に対する核種分離技術と精製技術は、核種の有効利用や廃棄物低減化に結びつき、環境負荷低減に貢献するものと期待できる。
【研究開発計画】
- 試験試料としては模擬物質から実際のFP元素やMA元素までを用い、液性に関しては塩酸-メタノール系から塩水溶液系までを検討し、さらに、吸着特性でもクロマトグラフィと破過・逆破過データの取得と、試験は計画的に進めている。
- 選択性の高いピリジン系樹脂を用いて精密なクロマト分離技術の高度化を目指して、試験結果に基づき計画内容の修正にも柔軟に対応し、クロマトの効率的分離条件や混合比を見出す事に成功している。なお、クロマト試験で得られた予想外のクロマト挙動についての理論的な解明は今後の課題として残された。
【目標達成度】
- ピリジン系樹脂によるMAの分離回収を達成するとともに、CsとSrの分離回収にはイオン交換樹脂を利用することで達成している。
- 新しい方法を用いて、乾式再処理から発生する塩廃棄物からMAが分離できることを示したことで、乾式廃塩の処理に適応性を確証するという当初の目標は達成できたと評価できる。
【研究開発成果】
- MA回収については、最適条件を見出すことにより当初の狙い通り高純度のAmとCmを高回収率で得ることに成功すると共に、廃塩の精製における課題を明確にし、その解決の方向性が示されたことは評価できる。
- 得られた成果から工学装置の規模を評価し、工学的成立性を示した点は評価できるが、Csのための分離工程はもう少し詳細に検討する必要があったと思われる。
- 酸の有無により希土類の分配が逆転する現象について化学形態および溶液条件の物理化学的性質を考慮して解明すること、さらに、エタノール濃度の溶離に対する効果について誘電率あるいは配意挙動の面からの熱力学的な評価をすることなど、今後の研究において、分離挙動の基礎的な解明が進む事を期待する。
【研究開発の波及効果】
- 乾式再処理に湿式化学分離手法の適用を試みて、新規な廃塩精製法の技術を見出したことは評価できる。これらの技術は,先進湿式分離技術にも十分展開可能である。
- 分配の逆転、アルカリ金属イオンの序列、エタノール濃度の効果など分離メカニズムをより詳細に解明することで、一般的な分離技術として発展性も見込めると思われる。
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2.総合評価
評価: |
- 乾式再処理模擬廃塩からピリジン樹脂を用いてMAの効率的な分離という目標を達成し、実際に高純度のMAを回収したことの意義は大きい。
- ピリジン樹脂を用いたイオン交換法による本研究の成果は、塩廃棄物の精製およびMAの分離を行うための分離技術として、将来性が見込めることを示した。
- 今後、分離メカニズムをより詳細に解明するとともに、分離の最適条件をさらに詰め、全体システムの視点での諸課題についての対応を図ることにより、実現性の高いものに仕上げていくことが期待される。本法と既往乾式法との総合的、比較評価が望まれる。
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3.その他 |
- 燃料サイクルの技術の開発に関しては、法規制や社会的受容性などの制約が多いため、目的とする物質の分離を工学的に達成するための分離現象を定量的に評価できることと、さらに、システムとして制御できる技術を構築することを常に考慮してもらいたい。
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