原子力システム研究開発事業

平成18年度採択課題事後評価の結果

原子力システム研究開発事業 −基礎研究開発分野−
若手対象型 事後評価結果

研究開発課題名:界面反応ダイナミクスに基づく耐熱合金の耐久性評価法の開発
代表研究者(研究機関名):竹田 陽一 (国立大学法人東北大学)
研究期間及び予算額:平成 18年度〜平成 20年度( 3年計画)35,554千円
項目 要約
1.事後評価 (目標達成度、研究開発計画、成果等)
【目標の立て方】
  • 研究目的および目標の設定は適切であると考えられる。
  • 非破壊的に構造材料の環境中の表面皮膜性状を分析する手法の開発であり独創性も高く環境脆化研究に対するニーズを捉えた提案である。
【研究開発計画】
  • 研究は計画どおりに遂行され、目的達成のためには適切な計画であったと評価する。
  • しかしながら、研究計画は多岐にわたっており、事業期間、実施規模を考えると、もう少し研究内容を絞って進める方策もあったかもしれない。
【目標達成度】
  • 高温ヘリウム雰囲気でのその場測定法の開発という当初の目標は十分に達成されている。特に顕微ラマン分光による材料表面生成物の950℃での「その場」測定には様々な創意工夫がなされ、有意義なデータが得られ、また、その結果を用いたNi基合金のクリープ強度の解釈にも成功している。
  • ただし、測定した以外の耐熱合金についてもこの考え方は適用可能か、さらに調査する必要があるかと思われる。
【研究開発成果】
  • ハステロイのクリープ変形挙動と表面皮膜の組成変化を結びつけるパラメータを提案し、加速クリープの開始時間を表面その場測定の結果から予測可能にした点が貴重で独創的な成果と考えられる。
【研究開発の波及効果】
  • 分析装置については、汎用性も高く、波及効果は大きいと考えられうる。例えば、アルミナのようにラマン分光が唯一の弁別手段となる系の分析への適用も十分想定され、今後、広範な応用を期待したい。
2.総合評価
 評価:A
  • 構造材料の環境中劣化は発電用原子炉に限らず大きな問題となるが、その機構解明を図り対策を講ずる上で“その場”観察や測定に基づくデータ・情報は非常に重要と考えられる。この観点から貴重な研究開発であった。
  • 顕微ラマン分光による「その場」測定技術は、耐熱合金の表面酸化物の分析だけでなく、様々な応用先が考えられる。その有効性を示すために、今後クリープ挙動の評価を十分に行ってもらいたい。
3.その他
  • Heガス中の不純物が脱炭や浸炭の発生挙動に変化を与え、クリープ寿命を変えることは予測できるが、材料表面に形成される腐食生成物の性状とクリープ寿命の相関については、詳細かつ慎重な調査が必要と思われる。
  • 先ずは、無負荷の状態で、不純物制御とクリープ寿命評価の基本的な情報としてのデータベース(クリープ寿命とガス不純物や腐食生成物の関係)を増やすべきである。また、応力腐食割れ感受性評価や発生因子の調査に応用可能と考えられる。

戻る 目標・成果 (240KB)
Japan Science and Technology Agency 原子力システム研究開発事業 原子力業務室