原子力システム研究開発事業

平成18年度採択課題事後評価の結果

原子力システム研究開発事業 −基礎研究開発分野−
若手対象型 事後評価結果

研究開発課題名:その場補修可能なナノ・マイクロ複合微粒子防食被覆法の開発
代表研究者(研究機関名):笠田 竜太 (国立大学法人京都大学)
研究期間及び予算額:平成 18年度〜平成 20年度( 3年計画) 26,496千円
項目 要約
1.事後評価 (目標達成度、研究開発計画、成果等)
【目標の立て方】
  • 鉛ビスマス液体金属を用いる高速炉において、構造材の防食技術の確立は重要である。本事業が目的とするナノ・マイクロ複合粒子防食膜を用いた防食技術の確立は、その重要性、独自性の観点から評価できる。また、本課題の遂行にあたり、事業担当者の持つ専門・実験技術を活かしつつ、腐食など新たな分野にも挑戦していることも評価したい。
【研究開発計画】
  • 研究計画そのものは、膜の合成と物性測定、腐食試験のための装置開発と腐食試験、さらにその場修復法の開発と合理的かつ無理のないものと思われる
【目標達成度】
  • 本課題では、少なくとも計画書に書かれた項目については実施され、その可能性を検証し、実用面を指向した研究として所期の目的を達成している。
  • 耐食性皮膜については、一定の成果をあげていることは評価できる。また液体金属の流れを模擬する回転式の腐食試験器の開発など、アイデアと工夫の努力も評価に値する。一方で、その場補修という革新的アイデアにチャレンジしたものの、必ずしも満足の得られるレベルに達していない。
【研究開発成果】
  • ナノ・マイクロ微粒子作製・付着技術に関する研究成果の価値は十分高く、これまでにない耐食性皮膜の作成方法を示した成果は大きい。
  • しかしながら、耐食性皮膜の評価が十分でなく、その場補修に関する成果では満足できない点がある。
【研究開発の波及効果】
  • 耐食性膜およびその被覆方法として、ナノ−マイクロ複合粒子を用いる考え方は発展性が期待できると思われる。高速炉に限定せず、Pb-Bi冷却材に接する様々な構造材料への適用が期待される。また、開発した腐食試験装置は簡便なスクリーニング手法として利用可能と思われる。
2.総合評価
 評価:A
  • 「その場修復」は達成できなかったものの、これまでにない耐食性皮膜およびその被覆方法については、十分な成果が得られている。ゾル−ゲル法による被覆形成技術は発展が期待できるので、実機適用性を考慮した展開もしてもらいたい。
3.その他
  • 本人にとってはこれまで全く経験の無いゾルゲル法という化学プロセス処理の研究を意欲的に進め、研究者としての奥行きを一層拡充することができ、人材育成につながったと思われる。
  • 被覆の健全性評価法を明確にして、研究を実施することを期待する。腐食量の測定法、被覆強度の測定法など、標準化を目指した研究も必要と思われる。回転式腐食試験法においては、試験温度、流速、溶存酸素の制御など、腐食環境制御も重要であるので、それに向けた改良型装置の開発は重要である。LBE自体は重い冷却材なので、負荷によるエロージョンが激しいと予測される。動粘度(ν)と自重の重畳効果も重要と思われる。核融合研究への適用については、LBEとLithium-leadの違いに着目して、臨んでほしい。

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