(3)達成目標
ナトリウム冷却炉の自然循環除熱では、冷却系内の温度分布と流量分布が密接に関連し、この結果として炉心部が高温化するほど冷却材流量が増加するといった優れた特性(自己制御性)を持つが、その評価にあたっては、温度分布と流量分布の相互作用等を高い精度で模擬することが必要になる。また、完全自然循環式崩壊熱除去系を採用した場合、外部電源の喪失あるいは主給水の喪失を伴った全ての「異常な過渡変化」及び「事故」事象に対し、自然循環による崩壊熱除去が適用されることになるため、各過渡事象下での現象推移を十分に評価しておく必要がある。
期待される成果は、自然循環崩壊熱除去時の熱流動に関する課題摘出と解決方策を提案するとともに、大型ナトリウム冷却炉の自然循環特性を評価できる解析・評価手法を開発することである。
本技術開発課題における具体的な開発要件は以下のとおりである。
・大型ナトリウム冷却炉の完全自然循環式崩壊熱除去系を対象に、自然循環挙動を再現可能な相似条件において試験を実施し、自然循環による崩壊熱除去時の課題を摘出した上で、その課題の解決を図ること。
・上記試験及び既往の知見に基づいて、完全自然循環式崩壊熱除去系を対象とした自然循環挙動を再現可能な解析コードを開発し、上記試験データにより検証すること。
・解析コードは、炉心、原子炉容器、配管、ポンプ組込IHX等が大型プレナム部での自然循環除熱特性を取扱うことから、多次元挙動を評価可能な解析モデルとすること。
・開発した解析コードは、炉心部の自然循環時ホットスポット温度及び原子炉、冷却系各部で発生する密度差に伴った熱過渡現象を評価可能なこと。
・大型ナトリウム冷却炉を対象とした自然循環事象の解析への適用性を示すこと。
(4)前提条件
・崩壊熱除去系型式:完全自然循環除熱式崩壊熱除去系(1次冷却系、2次冷却系、空気冷却系とも強制循環設備を設けないで、自然循環除熱のみで除熱する方式)
・崩壊熱除去系構成:DRACS×1系統+PRACS×2系統(図4に崩壊熱除去系の構成を示す。)
・崩壊熱除去運用:水系による除熱喪失事象を対象(代表事象:異常な過渡変化:外部電源喪失事象、主給水喪失事象)