原子力システム研究開発事業

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成果報告会開催

原子力システム 研究開発事業 成果報告会資料集

超音波による3 次元流速ベクトル分布計測システムの開発

(受託者)独立行政法人日本原子力研究開発機構
(研究代表者)大林寛生 J-PARC センター博士研究員

1.研究開発の背景とねらい

 液体金属の流動は、原子力発電所などの高エネルギーを発生させる装置冷媒、金属材料の製造過程や電磁流体力学発電(MHD)、地球流体力学の基礎的研究など、様々な分野に深い関連を持つ。ナトリウム冷却高速増殖炉においては、短縮化された冷却材流路系の流動安定性評価が技術的課題とされており、熱流動評価を含めた配管・構造設計の面から、液体金属流動場の実験的熱流動評価手法の確立が求められている。このため、本事業では、高温で不透明な液体金属に対して3次元計測により実際の流動状態を把握するため、超音波流速分布測定法(Ultrasonic Velocity Profiling、 以下、UVP) をもとに、液体金属流動場中3 次元流速ベクトル分布計測システム(以下Vector-UVP)の開発を実施している。また、実計測により得られたデータをもとに、これを予測計算等に反映させることで、現状では計測が極めて難しい500℃を超える液体金属流動場の挙動予測に資するものであると考える。

2.研究開発成果

 装置開発における前提として、システムに3 次元計測を可能とする機構を持たせることが必要不可欠である。提案するVector-UVP システムにおいて、信号受信、取込及びストレージに必要な端子が最低3ch、信号送信専用には最低1ch の端子が必要となるため、試作する流速測定装置システムの保有する入出力端子数を最低4ch と設定した。速度回復を実行するアルゴリズム(平成20 年度実施中)は、本研究事業で対象となる流れ場の流速条件及び必要となる器材等の性能、それに掛かるコストについて考慮し、パルス・ドップラー法を採用した。計測対象を想定した上での主な仕様目標は、送信周波数4〜8MHz、送信波数8cycle、3 次元計測測定範囲は30〜40mm 程度、計測線方向の最小空間分解能は1mm 程度、最小速度分解能5mm/sec、時間分解能は50 msec/profileとした。高温対応が求められる超音波トランスデューサについては、過去に溶融鉛ビスマス計測に使用された複合材型耐熱トランスデューサ(最大適用温度150 ℃)を採用した。表1 に試作機の仕様一覧を示す。

表1 Vector-UVP 試作機仕様
表1

図1
図1 超音波ビーム測定例

図2
図2 位置検出およびサンプリング時間検証実験結果

また、試作機に対し、実計測への適用性を評価するため、信号送受信の検査をするための検査装置を製作した。本装置を用い、計測媒体中で計測される超音波ビームの形成状況(図1)や、測定位置を模擬したタングステンワイヤーの位置検出試験を実施した。実験結果から、センサーユニットの小型化を考慮した場合、レシーバとして配置するトランスデューサの最適角度が約20°であること、信号の位置検出が十分に仕様を満たしていることが確認された。現在は実流動場計測に向けた計測プログラムの整備、21 年度実施予定の高温(250℃以下)液体金属流動場計測に向けた溶融鉛ビスマスループの設計を実施中である。

3.今後の展望

 20 年度に実施する常温流動場計測試験結果を実施し、現状における問題点などを抽出した後に試作機に適宜修正を加え、21 年度に実際の液体金属流動場計測試験を実施する。その後、計測結果を考察し、本事業の総括をする。本事業で開発する装置の課題として、高温超音波トランスデューサの耐熱性が挙げられる。事業で実施する温度条件(150-300℃以下)では計測に支障をきたすことは少ないと考えるが、実機計測(300℃以上)を想定した場合、現状では計測が難しいと考える。今後、実機計測を実施する場合は、素子の冷却等を考慮した機構を設ける必要がある。センサーの開発は日々進歩しており、本事業以外の場でも耐熱化に向けた動きが始まっている。センサー開発技術に新たなブレイクスルーがある場合は、それらの技術も今後積極的に取り入れていきたいと考えている。


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